86のスーパーチャージャーとターボどっちが良い?徹底比較
トヨタの86や現行のGR86に乗っていて、普段のドライブで「もう少し低速のトルクが欲しいな」とか、「ストレートでの絶対的な加速力が足りない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな時に真っ先に候補に挙がるのが過給機を追加するチューニングですが、いざ導入しようと思うと、86のスーパーチャージャーとターボはどっちが良いのか、本当に悩みますよね。
後付けする場合の費用や工賃はどれくらいかかるのか、馬力はどの程度上がるのか、そしてエンジン寿命への影響や車検に無事通るのかといった不安から、どちらを選ぶべきか足踏みしてしまうお気持ち、とてもよく分かります。
私自身もいろいろと調べていく中で、それぞれに明確なメリットとデメリットがあり、走り方によっておすすめの選択肢が全く異なることに気づきました。
この記事では、86に過給機を搭載する際の選び方の基準や、それぞれのリアルな費用感、絶対に知っておくべき注意点について、分かりやすくまとめています。
読み終える頃には、あなたの理想の走りにぴったりなチューニングの方向性がしっかりと見つかるはずですよ。
- 過給機チューニングの基本的な仕組みとそれぞれの方式の違い
- 走行シーンや目的に合わせた最適なキットの選び方と基準
- 導入にかかる費用の目安と燃費などの維持費に関するリアルな情報
- エンジンやミッションの耐久性など知っておくべき注意点と法的ルール
86のスーパーチャージャーとターボどっち?基礎

過給機チューニングを検討する第一歩として、まずはスーパーチャージャーとターボの基本的な仕組みや違いを理解しておくことが大切です。それぞれの特性を知ることで、86のスーパーチャージャーとターボはどっちが自分の理想に近いのか、少しずつ輪郭が見えてきますよ。
過給機チューニングの基本的な仕組み
そもそも86やGR86に搭載されている水平対向4気筒エンジン(FA20やFA24)は、自然吸気(NA)としての純粋なフィーリングを追求して設計された、素晴らしい名機です。
しかし、NAエンジンは自らのピストンが下がる力だけで空気を吸い込むため、どうしても吸入できる空気の量に物理的な限界があります。そこで登場するのが、いわゆる「過給機」と呼ばれる魔法のような装置です。
過給機とは、エンジンの吸入行程において、大気圧以上の高い圧力をかけて強制的に空気をシリンダー内へ押し込むシステムのことを指します。空気がたくさん入れば、それに合わせてより多くの燃料を燃やすことができるようになりますよね。
結果として、本来の排気量以上の爆発力を生み出し、エンジンの出力とトルクを劇的に向上させることができるというわけです。86向けの過給機チューニングには、大きく分けて「スーパーチャージャー」と「ターボチャージャー」の二つの方式が存在しており、それぞれ空気を圧縮するための物理的なアプローチが全く異なります。
このアプローチの違いが、後に解説するレスポンスやフィーリング、さらにはコスト面にまで大きく影響してくるため、まずは「強制的に空気を押し込んでパワーを上げる装置なんだな」という基本をしっかりと押さえておいてくださいね。
走行フィーリングとレスポンスの違い

過給機の方式によって、アクセルを踏み込んだ時の車の反応、つまり「走行フィーリング」は全く別の車になったかのように変わります。ここが、どちらを選ぶかの最大の分かれ道と言っても過言ではありません。
まずスーパーチャージャーですが、こちらはエンジンのクランクシャフトからベルトを介して、直接エンジンの動力を使って過給機を回す仕組みです。エンジンと連動して動くため、アクセルを踏んだ瞬間に過給が始まり、出力の遅延(ラグ)がほとんどありません。NAエンジンの自然なレスポンスをそのままに、全域で排気量がアップしたようなトルクフルな加速を味わえるのが最大の魅力かなと思います。
一方のターボチャージャーは、エンジンから排出される排気ガスの勢いを利用してタービンを高速回転させ、空気を圧縮する仕組みです。排気ガスがタービンを十分に回すまでにわずかな時間差が生じるため、いわゆる「ターボラグ」と呼ばれる遅延が発生します。
しかし、ひとたび過給が立ち上がると、スーパーチャージャーでは味わえないような爆発的なトルクの盛り上がりと、シートに押し付けられるような強烈な加速感を体感できます。最近のキットはタービンが小型化されラグも少なくなっていますが、それでもターボ特有のドラマチックなパワー感は健在ですよ。
導入コストとキット費用の目安
いざ過給機を付けよう!と思った時に、一番気になるのがお財布事情ですよね。実はこの二つ、初期費用にも結構な差が出てきます。
結論から言うと、一般的にはスーパーチャージャーの方がトータルコストを低く抑えられる傾向にあります。スーパーチャージャーはエンジンルームの前面にベルト駆動を追加するような形で装着できるため、比較的部品点数や作業の工数が少なくて済むからです。
例えば、HKS製のGT2スーパーチャージャーキットなどの場合、キット本体が約54万円から、そこにECU(コンピューター)のセッティング費用や取付工賃を含めると、トータルの目安としては約88万円〜100万円程度になることが多いです。
対してターボチャージャーは、高温の排気ガスを扱うため、専用のエキゾーストマニホールドへの交換や複雑な配管、そして厳重な遮熱対策が必須となります。TRUSTなどのボルトオンターボキット本体が約81万円からとなり、セッティングや工賃を合わせると、約120万円〜150万円以上の予算を見込んでおくのが現実的です。
費用に関する注意点
上記はあくまで一般的な目安です。実際にはスパークプラグの番手アップや、パワーに耐えるための強化クラッチへの交換、冷却用のオイルクーラー追加などが推奨(または必須)となるケースがほとんどです。正確な見積もりは、必ず施工を依頼するプロショップに確認してくださいね。
実燃費への影響と低下率の目安
パワーが上がるのは嬉しいけれど、「燃費が極端に悪くなるんじゃないか?」と心配になる方も多いと思います。これについては、正直にお伝えすると、やはり燃費は悪化してしまいます。
過給機を装着すると、空気をたくさん押し込む分、エンジンを壊さないように燃料も多く噴射しなければなりません。特に急加速時や、坂道などでエンジンに高い負荷がかかっている状態では、驚くほどガソリンを消費します。
具体的な数値の目安をお話ししますね。ノーマルの86/GR86の平均燃費がだいたい12.4km/L〜14.4km/Lくらいだと言われています(出典:トヨタ自動車『GR86 価格・グレード』におけるカタログ燃費等)。これが過給機を装着した後は、およそ10.0km/L〜12.2km/L程度まで低下するケースが多いようです。割合で言うと、およそ10%から20%ほどの燃費悪化を覚悟しておく必要があります。
ただし、ずっと燃費が悪いわけではありません。高速道路を一定の速度で巡航しているような、過給がほとんどかからない領域(ブーストがゼロ以下の負圧領域)であれば、ノーマルに近い燃費を維持することも十分可能です。
要するに、普段のアクセルワーク次第で日常使いの経済性はある程度カバーできるということです。ついつい気持ち良くて踏み込んでしまう気持ちは分かりますが、燃費を気にするなら「メリハリのある運転」を心がけるのがコツですよ。
ZN6とZN8のエンジンの特性と課題
86は、初代の「ZN6」と現行のGR86である「ZN8」で、搭載されているエンジンのポテンシャルや抱えている課題が少し異なります。ここを理解しておかないと、過給機選びで失敗してしまうかもしれません。
初代86(ZN6)に搭載されている2.0LのFA20エンジンは、回して楽しい素晴らしいエンジンですが、排気量の関係もあって「4,000rpm付近のトルクの谷」や低中速域での細さが弱点として指摘されがちでした。そのため、ZN6においては、街乗りでの使い勝手を劇的に向上させるスーパーチャージャーが非常に相性が良く、日常走行の質をワンランク引き上げてくれる特効薬になります。
一方で、現行のGR86(ZN8)に搭載されている2.4LのFA24エンジンは、排気量が上がったことでNAのままでも十分な低速トルクと力強さを備えています。ZN8に過給機を追加するということは、弱点を補うというよりは「格上のハイパワースポーツカーと真っ向勝負できる戦闘力を手に入れる」という、さらなる高みへのステップアップを意味します。
しかし、ZN8は元々のトルクが太い分、過給によるパワーアップが車体側(特にミッションなどの駆動系)に与える負担も跳ね上がります。そのため、ZN8の場合は「いかにパワーを絞り出すか」よりも、「いかに駆動系を壊さずに安定させるか」というバランス重視のセッティングが極めて重要になってくるんです。
86のスーパーチャージャーとターボどっちを選ぶ
基礎知識を押さえたところで、次はいよいよ具体的な選び方の基準を見ていきましょう。86のスーパーチャージャーとターボのどっちを選ぶかは、あなたが普段どのような場所を走るのか、そして車をどれだけ大切に維持していけるかという視点がとても重要になってきます。
主な走行シーンと目的による選び方

過給機の選択は、単にカタログスペックの数字を上げるだけではなく、愛車の性格そのものを決定づける大切な要素です。まずは、ご自身がメインで走るステージを思い浮かべてみてください。
もしあなたが、普段の街乗りを快適にこなしたい、あるいは週末にワインディングロード(峠道)を軽快に流すのが好きなら、スーパーチャージャーが圧倒的におすすめです。アクセルを踏み込んだ瞬間にスッと車が前に出るレスポンスの良さは、ストップ&ゴーの多い市街地や、コーナーが連続する峠道での繊細なアクセルワークにピタリとハマります。どこから踏んでも加速する柔軟性は、運転のストレスを大きく軽減してくれますよ。
逆に、サーキットでのスポーツ走行をメインに考えていたり、ストレートエンドでの最高速にロマンを感じる方、あるいはドリフト競技でリアタイヤを豪快に空転させ続けたいという方には、ターボチャージャーの独壇場となります。
ターボの強大な中高回転域の伸びは、富士スピードウェイのような超高速コースでタイムを削るための強力な武器になります。また、ターボ特有の過給が立ち上がる瞬間の「ドッカン」というトルク変化を、ドリフトのキッカケ作りに利用するプロフェッショナルも多いですよね。目的に合わせて、車の性格をどう染めたいかで選ぶのが正解です。
エンジン本体の限界とブロー対策
パワーを手に入れるワクワク感の裏側には、常にリスクが潜んでいます。86/GR86のエンジンに過給機を付ける際、絶対に忘れてはいけないのが「エンジンの物理的な限界」です。
ZN6のFA20も、ZN8のFA24も、元々はターボが付いていない自然吸気(NA)専用として、非常に高い圧縮比で緻密に設計されています。そのため、エンジン内部のピストンやコンロッドといった部品を強化せずに(ポン付けで)過給を行う場合、その許容限界は意外と低いという事実を知っておく必要があります。
一般的な目安として、エンジンを壊さずに安全に楽しめる範囲(安全圏)は、純正の出力からプラス50馬力程度、トータルで約250ps前後だと言われています。純正のインジェクター(燃料噴射装置)の容量などを考慮すると、どんなに頑張っても限界点は290ps前後です。
もし、内部強化を行わずに300psを超えるような出力を常用してしまうと、特にサーキットなどの高負荷な状況下において、一瞬でエンジンが粉々に壊れる「エンジンブロー」のリスクが飛躍的に高まります。過度なブーストアップや、素人判断でのECUデータの書き換えは絶対にNGです。必ず、86の過給機チューニングに精通した信頼できるプロショップに依頼し、現車に合わせた安全なセッティングを行ってもらってくださいね。
ミッションと駆動系の耐久性問題
エンジン本体に次いで、あるいはそれ以上に気を使わなければならないのが「トランスミッション」をはじめとする駆動系の耐久性です。チューニング業界では、86/GR86のミッションはトルクの増大に対して非常にデリケートだという評価が定着しています。
特に現行のGR86(ZN8)の場合、元々トルクフルな2.4Lエンジンに過給機のパワーが上乗せされることで、ミッション内部のギアやシンクロナイザーがその強大なねじれに耐えきれず、破損してしまう事例が少なからず報告されています。
マニュアル車(MT)はもちろんですが、オートマ車(AT)の場合はさらに注意が必要です。急激なトルクアップにAT本体の許容トルクが追いつかず、内部のクラッチが滑ってしまったり、変速ショックが異常に大きくなったりするトラブルを招く恐れがあります。
そのため、ミッションや駆動系の保護を第一に考えるのであれば、無理にターボで高出力を狙うのではなく、スーパーチャージャーを選択し、出力を300ps未満の安全な領域に留めておくというのが、実は最もバランスが良く、長く楽しめる「賢い選択」だと言えるんです。
合法に走るための構造変更手続き
チューニングカーに乗る上で、避けて通れないのが「車検」の問題です。後付けの過給機を装着したまま、堂々と公道を走り続けるためには、日本の道路運送車両法に基づいたきちんとした手続きが必要になります。
86/GR86にボルトオンターボやスーパーチャージャーを取り付けた場合、エンジン出力の向上に伴う重量変化や、吸排気系の仕様変更が発生するため、ほとんどのケースで「構造変更」の申請が必要になります(出典:国土交通省『構造等変更の手続』)。これを怠ると違法改造車となってしまい、警察の検挙リスクがあるばかりか、ディーラーでのメンテナンスも断られてしまいます。
構造変更の手続きは、車検証や専用の図面、強度の計算書、排ガス試験結果証明書などを陸運支局へ提出して書類審査を受け、その後実際に車両を検査場へ持ち込んで実車検査を受けるという流れになります。無事に合格すれば、車検証の型式欄に「ZN6改」などの「改」の文字が入り、晴れて公認車両となります。
手続きをスムーズに進めるコツ
構造変更を個人で行うのは非常にハードルが高いため、過給機を取り付けたショップに代行を依頼するのが一般的です。HKSなどの大手メーカーのキットであれば、あらかじめ車検対応を前提とした「排ガス試験証明書」が付属していることが多く、この書類があるだけで公認取得の難易度がグッと下がりますよ。また、構造変更が受理されるとそこから新たに2年間の車検がスタートするため、現在の車検満了日のタイミングに合わせて実施するのが最も無駄がなく効率的です。
オイル管理と定期点検の重要性
過給機を装着した86/GR86は、もはや普通の乗用車ではなく「特殊車両」としてのシビアな管理が求められるようになります。メンテナンスを怠ることは、せっかく大金をかけた愛車の寿命を劇的に縮めることに直結します。
中でも一番重要なのが、エンジンオイルの管理です。ターボチャージャーは高温になるタービンの冷却と潤滑にエンジンオイルを使用しますし、スーパーチャージャーでもエンジン出力が上がればオイルへの熱負荷は跳ね上がります。つまり、NA時代とは比較にならないスピードでオイルが劣化していくのです。
交換頻度の目安としては、3,000km走行ごと、距離を乗らなくても半年ごとの交換が強く推奨されます。また、オイルの粘度も純正推奨のエコカー向け低粘度オイル(0W-20など)ではなく、熱ダレに強い「5W-40」などのスポーツ走行向けの高粘度オイルを選ぶのが鉄則です。
さらに、オイルクーラーを後付けしている場合は、配管やクーラーコアの容量分だけ純正の規定量(約5.4L)よりも多くのオイルが必要になる点も忘れないでください。プラグの消耗も早まり、エアフィルターの汚れもダイレクトに出力低下に繋がるため、日頃からのこまめな定期点検が愛車を守る最大の防御になります。
86のスーパーチャージャーとターボどっちが最適
ここからは、あなたの目的や重視するポイントに合わせて、86のスーパーチャージャーとターボのどっちが最適なのか、具体的なキット名を挙げながらタイプ別におすすめをご紹介していきますね。自分に一番当てはまるものをチェックしてみてください。
【街乗りの人】HKSスーパーチャージャーがおすすめ

「サーキットには行かないけれど、普段の通勤や街中でのドライブをもっと快適に、もっと楽しくしたい!」という方には、HKS製のGT2スーパーチャージャーキットが圧倒的におすすめです。
街乗りで一番ストレスに感じるのは、信号待ちからの発進や、ちょっとした追い越しでのパワー不足ですよね。HKSのスーパーチャージャーは、エンジンの回転数に比例してリニアに過給が立ち上がるため、アクセルを少し踏み込んだだけで、まるで大排気量車に乗っているかのようにスムーズに車体が前に押し出されます。
このキットを選ぶメリット
- アクセルに対する遅延(ラグ)がなく、非常に自然で扱いやすいレスポンス
- 低中速域のトルクが底上げされるため、街乗りでのストップ&ゴーが驚くほど楽になる
- 排気系からの熱干渉が少なく、エンジンルーム内の温度上昇を比較的抑えやすい
特に、トラクションドライブ方式を用いた遠心式を採用しているため、従来のスーパーチャージャーに見られがちな高回転での頭打ち感がなく、NAエンジンのような気持ちの良い吹け上がりを維持したまま全域でパワーアップできるのが素晴らしいポイントです。
注意しておきたいポイント
ターボのような背中を蹴飛ばされるような爆発的な加速感はないため、「過激な変化」を求める方には少し大人しく感じられるかもしれません。また、後述する専用のトラクションオイルの管理という特有のメンテナンスが必要になります。
【峠派の人】BLITZスーパーチャージャーがおすすめ
「週末はよくワインディングロードに走りに行く」「コーナーの立ち上がりで気持ちよく車を前に進めたい」という峠道メインの方には、BLITZなどのスーパーチャージャーキットを用いて、あえて出力を抑えめにセッティングするスタイルをおすすめします。
タイトなコーナーが続く峠道では、パワーがありすぎてもタイヤが空転してしまい、かえって危険で走りにくくなってしまいます。そこで、スーパーチャージャーのレスポンスの良さを活かしつつ、出力を280ps〜300ps程度に意図的に抑え込むことで、シャーシやタイヤの性能と見事にバランスのとれた「最高に楽しいコーナリングマシン」に仕上げることができます。
このセッティングを選ぶメリット
- コーナリング中の繊細なアクセルワークにエンジンが忠実に反応してくれる
- パワーを持て余すことなく、車の挙動を手のひらでコントロールする楽しみを味わえる
- エンジンや駆動系への負担を安全圏内に収めることができ、車両の寿命を延ばせる
すでにエキマニ(エキゾーストマニホールド)を社外品に交換している車両であれば、スーパーチャージャーとの相乗効果で排気効率がさらに良くなり、中速域のレスポンスが極立つため、ワインディングでの気持ち良さは格別ですよ。
| 重視する特性 | おすすめの方向性 |
|---|---|
| レスポンスと扱いやすさ | スーパーチャージャー(出力280〜300ps推奨) |
| 車両の長期的な維持 | 無理なブーストアップを避けた安全マージン確保 |
注意しておきたいポイント
サーキットの長い直線などでハイパワーなターボ車と並ぶと、どうしても絶対的なパワー差で引き離されてしまう場面があります。あくまで「コーナーを楽しむ」ための割り切りが必要です。
【高速走行の人】TRUSTボルトオンターボがおすすめ
「富士スピードウェイのような国際レーシングコースを走る」「ストレートエンドでの最高速や、圧倒的なピークパワーを追求したい」という生粋のスピードジャンキーな方には、TRUST(GReddy)のT620Zなどを採用したボルトオンターボキットが最適です。
ターボチャージャーの最大の魅力は、なんといってもその圧倒的な馬力の伸びと、高回転域における天井知らずのパワー感です。エンジンルームの熱やミッションの耐久性など、クリアすべきハードルは高くなりますが、それらを乗り越えた先にある「ターボ特有のドラマチックな加速」は、一度味わうと病みつきになる魔力を持っています。
このキットを選ぶメリット
- スーパーチャージャーでは到達しにくい、中高回転域での爆発的なパワーと最高速の伸び
- 将来的にエンジン内部(ピストンやコンロッドなど)を強化すれば、さらなるハイパワー化が狙える拡張性の高さ
- ターボが立ち上がった瞬間の、シートに深く押し付けられるような強烈な加速フィーリング
150万円以上の十分な予算を用意し、クラッチの強化や大容量ラジエーターの導入など、車体側をターボのパワーに耐えうるようにしっかりと作り込める、覚悟を持った中級〜上級者向けの選択肢と言えますね。
注意しておきたいポイント
低回転域ではターボが効かない「ターボラグ」が存在するため、街乗りの低速域では少しもたつくように感じることがあります。また、極端に高温になるため、油温・水温の厳重な管理とクーリング対策が絶対に欠かせません。
【ドリフトな人】HKSボルトオンターボがおすすめ
「リアタイヤを豪快に空転させて、白煙を上げながらドリフトを楽しみたい!」という競技志向の方には、HKSのGTIII-RSなどの小型で高効率なタービンを採用したボルトオンターボキットが強く支持されています。
ドリフト走行において重要なのは、車体を横に向けた状態を維持するために、高回転域で常にリアタイヤを回し続ける強大なパワーです。ターボチャージャーであれば、この要求に見事に応えることができます。また、ターボの過給が立ち上がる瞬間の急激なトルク変化(いわゆるドッカンターボ的な挙動)を、意図的にリアのトラクションをブレイクさせる「キッカケ作り」として活用することもできるんです。
このキットを選ぶメリット
- 高回転域でのパワー維持が容易で、ロングコーナーでもドリフトの飛距離を伸ばせる
- 最新の高効率タービンにより、ターボラグが最小限に抑えられ扱いやすさが向上している
- プロフェッショナルな競技シーンでも実績があり、ハードな使用に耐えうるポテンシャル
ドリフトのプロフェッショナルたちは、ターボの熱問題やミッションの脆弱性という欠点を理解した上で、予算と確かな技術を投じて対策を行い、ターボの爆発力を最大限に引き出しています。まさに「勝つため」の本格的なチューニングですね。
注意しておきたいポイント
ドリフト走行はエンジンやミッションへの負荷が異常に高いため、頻繁なメンテナンスや部品交換のサイクルが非常に短くなります。維持費が青天井になる可能性もあるため、十分な資金計画が必要です。
86のスーパーチャージャーとターボどっち?注意点
最後に、過給機チューニングの夢を現実にするために、絶対に知っておきたい注意点やよくあるトラブルについて解説します。86のスーパーチャージャーとターボのどっちを選ぶにしても、長く安全に楽しむためには、これらのリスクと向き合う覚悟が必要です。
トラクションオイルの専用品への交換
スーパーチャージャーを選ぶ上で、見落としがちなのがこのオイル問題です。HKS製のGT2スーパーチャージャーなどで採用されている「トラクションドライブ方式」の過給機は、エンジンオイルとは別に、スーパーチャージャー本体の内部を潤滑・冷却するための「専用のトラクションオイル」を循環させる独立したシステムを持っています。
この専用オイルは、エンジンの熱や過給機自身の摩擦熱によって徐々に劣化していきます。もし、オイルが不足したり、劣化したまま交換せずに使用を続けたりすると、最悪の場合、高価な過給機本体が焼き付いて破損してしまいます。
通常のエンジンオイル交換に加えて、メーカーが指定する走行距離や期間(インターバル)できっちりと専用トラクションオイルを交換し、定期的にリザーブタンクの液量を目視で確認する癖をつけることが、スーパーチャージャーを長持ちさせる絶対条件です。
サーキット走行での熱対策とクーリング
サーキットを連続して周回するような過酷な状況において、過給機装着車に立ちはだかる最大の敵は「熱」です。特にターボチャージャーを選択した場合、この熱問題は非常に深刻になります。
ターボは、800度から900度にも達する超高温の排気ガスが通るエキゾーストマニホールドと一体化して設置されるため、エンジンルーム内の温度が尋常ではないレベルまで上昇します。対策を怠ると、あっという間にエンジンオイルの温度(油温)や冷却水の温度(水温)が危険水域に達し、エンジンがセーフモードに入ってしまったり、最悪の場合はオーバーヒートでエンジンが壊れてしまいます。
そのため、ターボ化する際は、大容量のオイルクーラーの追加や、冷却効率の高いアルミラジエーターへの交換、さらにはボンネットのダクト加工による排熱対策などが実質的に「必須」となります。スーパーチャージャーはターボに比べれば排気系からの熱干渉は少ないですが、それでもNA時代よりは確実に熱を持ちやすくなるため、油温計・水温計の後付けによるこまめな温度管理は不可欠ですよ。
過度なパワーアップによるATの滑り
「AT(オートマチック)車でも過給機は付けられますか?」という疑問もよく耳にします。結論から言えば装着自体は可能ですが、MT車以上にパワーアップの限界にシビアになる必要があります。
86/GR86の純正ATは、当然ながら自然吸気エンジンの出力に合わせて設計されています。そこに過給機を付けて強大なトルクを入力してしまうと、AT内部のクラッチがその力に耐えきれず、アクセルを踏んでもエンジン回転だけが上がってスピードが乗らない「滑り」という現象が発生することがあります。
また、滑るまではいかなくても、変速時のショックがガツン!と異常に大きくなったり、AT本体の寿命を大幅に縮めてしまうリスクがあります。AT車で過給機チューニングを楽しむ場合は、ショップとよく相談の上、パワーを控えめにセッティングしてもらい、ATフルード(ATF)の冷却対策もしっかりと行うことを強くおすすめします。
改造車の任意保険の手続きと注意点
無事に構造変更を済ませて「改」公認車両になったからといって、安心してはいけません。もう一つ、絶対に忘れてはならない重要な手続きがあります。それが「任意保険の告知」です。
車検証の型式に「改」が付いた場合、車両の仕様が契約当初から変更されたことになります。この事実を保険会社に正確に告知せずに乗り続け、万が一事故を起こしてしまった場合、「告知義務違反」を問われて保険金(補償)が一切支払われないという最悪の事態に陥るリスクがあります。
多くの保険会社では、ショップできちんと構造変更の公認を取得しており、保安基準を満たしている合法な車両であることを説明すれば、引き続き契約を継続してもらえることがほとんどです。チューニングが完了して車検証が新しくなったら、必ずその日のうちに保険会社の代理店やカスタマーセンターに連絡し、必要な手続きを済ませてくださいね。
結論、86のスーパーチャージャーとターボどっち
ここまで、非常に長文にお付き合いいただきありがとうございました。いろいろと解説してきましたが、結局のところ「86のスーパーチャージャーとターボはどっちが良いの?」という疑問に対する私の答えは、「あなたが86とどう付き合っていきたいかによって、正解は変わる」ということです。
街乗りやワインディングを気持ちよく駆け抜け、NAのような自然なフィーリングと扱いやすさを重視するなら「スーパーチャージャー」がベストな選択です。一方で、サーキットや最高速、ドリフトで圧倒的なパワーを誇示し、車をイジり倒すロマンを追求したいなら「ターボチャージャー」があなたの欲求を満たしてくれます。
過給機の装着は、86/GR86という素晴らしい名車を、別次元のパフォーマンスへと引き上げてくれる本当に魔法のような手段です。しかし同時に、ノーマル時代のような「メンテナンスの甘さ」は一切許されなくなる、真のスポーツカーへの変貌を意味します。
この記事でご紹介した数値や費用はあくまで一般的な目安です。ご自身の予算やライフスタイルとよく照らし合わせ、最終的な判断や具体的なセッティングについては、ぜひ信頼できるプロの専門ショップに足を運んでじっくりと相談してみてください。あなたの86ライフが、よりエキサイティングで充実したものになることを心から応援しています!
